◆更新情報◆

2012年07月08日

蕪村生誕三百年記念事業の成功を期して

    
蕪村生誕300年記念事業実行委員会委員長  
         大阪市立大学大学院文学研究科教授・博士(文学)   
  村田 正博

   

 江戸時代の俳人 与謝蕪村は、江戸時代の半ば、享保元年(1716)に摂津の国東成郡毛馬村に生まれました。この文学史の上の事実は、私たちにとって、大いに注目されるところです。一つには、その生誕の地が、現在も大阪市都島区にその名を伝える「毛馬」であり、幾つかの俳句とともにその名を記憶していた蕪村という、いわば偉人的な存在に対して親近を感じる機縁となる点において。そうして、もう一つは、蕪村誕生より数えて、五年後(2016年)にはちょうど「三百年」を迎え、その遺業をしのび、そこに私たちの汲むべき現代的意義について考える、まことに佳き機会がめぐってくるという点においてであります。

 このことに思いをいたし、NPO法人近畿フォーラム21が主宰して、大阪府・大阪市・大阪市教育委員会・学校法人追手門学院・日本書芸院・大阪文化団体連合会・大阪俳人クラブの後援のもと、蕪村のふるさと毛馬に「蕪村公園」が造営されたのを機に、市民講座「蕪村顕彰俳句大学」を開設致しました。平素は大学で講筵をもたれている先生方にお願いして市民の皆さんに俳句についての理解を深めていただく「俳句歴史の面白さ講義」をひらいてご好評を博するとともに、大阪で活躍しておられる俳人の先生方を招請、市民の皆さんに「俳句つくり」の指導にも力を尽くして頂きました。
 昨年9月19日、そうして本年3月27日には優秀作品の表彰、および最優秀句刻字プレートの除幕を挙行いたしました。わけても、3月の表彰式では、大阪市立昭和中学校2年生 山本清和君の作「太陽が高くなりゆく春隣」が大阪府知事賞(新設)を、大阪市立鶴見小学校5年生 中田匠哉君の作「水面をさくらの花が流れてく」が大阪市教育委員会委員長賞(これも新設)をそれぞれ受賞し、ベテラン諸先達のみなさんとともに、新世代への期待を大きくふくらませております。
 この間、「蕪村公園」の一角に植栽も行いましたし、「蕪村顕彰俳句大学」も本年3月には第2期を終え、4月からは第3期が開講されました。また、俳句制作の推進を念じて、今後とも「大阪府知事賞・大阪市市長賞・大阪市教育委員会委員長賞・蕪村顕彰俳句大学学長賞」の贈呈式を企画しており(半年ごと)、公園内の最優秀句刻字プレートに新たな作品の数々が加えられるのが鶴首されるところです。
 きたる「蕪村生誕三百年記念事業」に向けて、これらの事業をさらに発展させてゆきたい存念でおりますことは申すまでもありませんが、「三百年」を迎える2016年を期してその実現を心に期していることがございます。
 その一つは、俳句の理解、俳句の制作を通して、大阪と世界をつなぐ一大句会を開きたいということです。多くの人々が世界平和を祈念しているにもかかわらず、政治の衝突、民族の紛争、宗教の軋轢など、日々の報道には胸が痛みます。そんな厳しい情勢のなか、これまで幾世紀にもわたって、決裂する国と国、対立する人と人をつないで、その心の和合をはかってきたものが、ほかでもない、「ことば」というものであります。たとえば、停戦の宣言や誓約書など、その端的な一例ですが、そこには力の関係や裏の画策もなくはなく、「ことば」の純粋な顕現とは言い切れない面もあるでしょう。

では、文学のことばはどうでしょうか。敵性の文学として輸入や翻訳が禁じられても、文学は、国家や民族の壁を超えて、人と人とをその胸の深みにおいてつなぎ、平和を勝ち取る原動力となってきたことを思い起こしていただきたいと思います。

 俳句は、文学の中でも、最も親しみやすいもの。十七音節という極限のすがたは、そのぶん限りなく奥深いものであるのはもちろんですが、愛好する人々の支持という点では、和歌や詩、小説や物語の比ではないという事実があります。

 この俳句を通して、世界をつなぐことはできないものでしょうか。

蕪村のふるさととして、この大阪から世界に向けて俳句の架け橋を架けわたして親善の輪を拡げる、その第一歩として、「蕪村生誕三百年」を記念する国際的な句会を開催したいと切望しております。
 もう一つ、大望があります。「蕪村生誕三百年」を期して、蕪村、さらには俳句の情報基地を私たちの手で開設したいということであります。

 和歌の歴史の上での第一人者、柿本人麻呂について、この書物をひもとけばそのすべてがわかる、そんな「人麻呂百貨店」とでもいうべきものを目指して、昭和の大歌人齋藤茂吉が大著『柿本人麿』全5冊(總論篇、評釈篇上・下、鴨山考 同補註篇、雑纂篇)を上梓しました(昭和9〜15年)。

そのひそみにならって、私たちは、いわば「蕪村百貨店」を、この時代ですからITによる情報基地として構築したいと考えています。

 蕪村やさらには俳句に興味を持つ市民の皆さん、卒業論文で蕪村や俳句を研究しようとする学生諸君、海の向こうで日本の文化や文学に関心を寄せてくださる方々が、ひとたびここを開けば、蕪村や俳句に関する情報をたちどころにどっさり入手していただける―、そうしてさらなる造詣を深めていただく契機となるような―、そんな蕪村をめぐる「情報百貨店」を立ち上げたいと思うのです。
 「蕪村生誕三百年」を期して、皆さまに喜んでいただける「記念事業」の実現をはかってゆくには、まず、お力をお貸しくださる皆さまとともに夢を大きくふくらませることから始めたいと思います。上に記しましたのは、その一例に過ぎません。
この「記念事業」のための「実行委員会」を始動させていただくにあたり、なによりも願われますのは、ともに夢を語り、その実現へとひた走る、しなやかな青年の力、ねばりづよい熟年の知恵の集結―、与謝蕪村という、三百年の昔、この大阪に生を稟(う)けた文学者に思いを寄せる同志としてのうるわしい協賛にほかなりません。
 この事業に対しまして惜しみなきお心寄せとお力添えをたまわりますよう、こころよりお願い申し上げる次第です。
posted by 蕪村生誕300年記念事業実行委員会 at 09:30| Comment(0) | TrackBack(0) | ご挨拶 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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